「割り切って・思い切って2割を変える」に繋げるためのネタ探し - Learning by ワークショップ実践のリフレクション。
過去二回、「企画の意図編」「当日プログラム編」に分けてイベントレポートをお伝えしてきましたが、今回は記事では、1月5日(木)に行ったワークショップ実践のリフレクションについて書きたいと思います。
そしてこれがマナビをマナブワークショップのイベントレポートとリフレクションに関する連載シリーズの最後の記事になります。
さて、1月5日(木)に実践したワークショップですが、あらかじめ意図を持って設計していたプログラムのため、振り返りをする上での視点が定まっており、溢れるように、次回以降改善したいことや引き続き取り組みたいことが出ています。
次回より良い実践を行うヒントがそこにあると思うと同時にエネルギーも溢れますね。
すべての項目をこのブログで紹介すると今後のネタバレにもなりますし、文量も相当多くなるので、今回はプログラムに関するものとワークショップ運営に関するものからそれぞれ三つずつリフレクションを通して得た教訓を紹介したいと思います。
前回までの関連記事はこちら
1月5日(木)実施、マナビをマナブワークショップの振り返り
以前にも、こちらの記事で紹介したように、僕はリフレクションを行う際はその記述の仕方について、以下のフォーマットを用いるように統一しています。今回も、そちらに則って教訓に対して、①具体例、②意味合い、③気づきのきっかけを併せて記載しています。
■リフレクションは次にどうするかという原理原則/教訓を書き残す
・具体的な行動のイメージを例として挙げる
・なぜその教訓が重要なのか意味合いを書く
・気付きのきっかけになった出来事や経験を書く
プログラムに関する振り返り
■アイスブレーキングで行った「ラインアップ」の活動をよりテーマに沿った効果的な形でファシリテートできるように見直す
- 回数を増すごとに熟達していく仕組みや回数を増すごとに制約条件が増えていく仕組みなどを取り入れるなど、「遊びのような活動の中に埋め込まれた学び」という観点からテーマに寄せた設計に変更する。
- アイスブレーキングは冒頭のイントロダクションを受けて、最初の参加者が行う活動になる。参加者同士のコミュニケーションが生むことや意欲を引き出すことを狙った仕掛けが必要になるため。アイスブレーキングがファシリテーターと参加者の間の関係性がどう繋がるかを左右する分岐点になる。
- 参加者の日常での関係性をほぐす、参加者同士が即興的に協力するという目的に沿った活動ではあるものの、ファシリテーターとして参加者の振る舞いに介入しすぎた感があった。そのことが逆に用意された環境で主体的に振る舞う、ネガティブな意味合いでの「アイスブレーキングっぽさ」を作っていた。
■参加者の考えていることや感じていることの変化を記録、可視化できるようにワークシートを作成し、事前に配布する
- 進行用スライドで空欄を作っているページや問いかけを行うページは手元の資料として配布したり、記入用のワークシートを作成して受付時に配布する。ワークシートへの記入状況を踏まえながらワークショップを進行するようにファシリテーション中の視野を拡げる。
- 二つの意味合いで記入用のワークシートを準備する必要性を感じた。一つは参加者の考えていることや感じていることを「書き込む」行為を促す仕掛けを使って表出させること。ファシリテーション中は参加者の考えていることや頭の中にあることと自分の発言を紐づけたいため、随時参加者が何を考えているのか、その反応が確認できるように工夫したい。もう一つは参加者にとって、ワークショップに参加できる方法を発言する以外にも担保すること。今回は人数が少なく考えを発言しやすい空気感があったが、人数が増えると心理的ハードルも高まる。ワークシートなどいくつか関わり方のレパートリーを用意することでそれが解消できる。
- ワークショップ実施後に中原先生のブログを読んだ際に思いついた。南山大学での講演の際に、A3大のワークシートに書き込みながら話が聞けるようにしました、といった旨の記述があり、これはパクることができると思った。
■参加者にとって、より身近で現実に直面している課題に繋がるプログラムになるよう、事例提示を増やし日常との関連性を高める
- プログラムを通して、冒頭のイントロダクションから終盤のトーキングライブ、ラップアップまで概念的な話が多く続くものを再構成し、参加者層に合わせて現実で起こっている課題や事例を盛り込みながらファシリテーションを行えるように引き出しを増やす。
- ワークショップやイベントを学びの機会として最大化するためには、活動に夢中になって楽しめるような仕掛けや、あるいは必要性を痛感し、ワークショップで扱うテーマを学ぶ意味合いを持ってもらう仕掛けが大切になる。
- ワークショップ実施後に高校時代の部活の顧問と話していた際に、参加者層の実生活で必要になることや意味合いがわかりやすい設計にする必要があるとフィードバックを頂いた。タモリやとんねるずよろしく、「なんだかよくわからないけど、面白いもの」では今の高校生には通用しないらしい。
ワークショップ運営に関する振り返り
■ワークショップやイベントにおいては盤石の集客状況こそが全てを癒す
- 集客を行う上でキーパーソンになる関係者にはあらかじめ打診をする、SNS上で繋がっている友人・知人には個別に連絡をして声かけをする、集客基盤となる組織やコミュニティと繋がる、メディアを活用して次回以降の集客のきっかけを作る。
- 適切な人数でワークショップやイベントを実施するためには、余裕をもって集客状況に見込みをつけることが必要。早め早めに動くことができれば、キャンセル待ちや増席、見学対応など様々な打ち手を検討することができる。適切な参加者層と人数を揃えなければ、意図を持ってプログラムを設計しているにも関わらず、その効果検証を行えなくなる。
- 今回は集客については直前までご案内をさせていただくケースが多くあった。また、当初想定していた参加者層ではなく大学生が多くなった形での実施となり、本来意図した効果をプログラムが持っているのか検証することができなかった。アクションリサーチを行う上では万全の準備を期して、自ら実験環境設定を行うことが必要。
■ワークショップ終了後に参加者同士が繋がりを維持することができる仕組みを作る
- FacebookグループなどのSNSを使ってオンラインコミュニティを作っていくことやフォローアップのヒアリングを兼ねて数ヶ月に一度参加者同士で集まる機会を作る、参加者の中から運営スタッフとしてお手伝い頂ける方を探していくなど、ワークショップを通じて出会った人たちの繋がりを蓄積する。
- 効果検証の観点だけではなく、学びの共同体としての機能を高めていくためにも事後交流をどのように促し、関係性や参加者の学びが蓄積していく仕組みを作ることが必要になっている。派生したワークショップを実施したり、内容を充実させシリーズ化してにあたって繰り返し参加して頂ける方の基盤を作る上でも重要。
- 前回・今回と連続して参加いただいた方からフィードバックを頂いた内容。2015年に実施したワークショップも充実した内容だったが、単発で終わってしまいその後、参加者がどのような一年を過ごしたのか興味があったとのご意見を頂いた。
■参加者を集めることはもちろん重要だけれども、それと同等に運営スタッフを十分に確保することも重要
- 活動の記録や写真撮影、受付対応など当日想定される役割をあらかじめ洗い出した上で必要となる運営スタッフの人数を確保する。
- 自分自身で企画・運営からファシリテーションまで行っているワークショップではあるものの、当日のオペレーション上で一人では対応しきれないことが発生する。今回で言えば、昼食用に注文していたデリバリーが届かなかったことや欠席者の対応など運営スタッフに緊急対応を依頼することができたはず。また、活動を記録したり撮影する上でも専属でスタッフを置いたほうが良い。
- 当日ファシリテーションを行いながら、自分で写真撮影をしていたため手元にある写真に偏りがあり、プログラム全体の様子をバランス良く記録を残せていない。また、参加者の様子など事後レポートを書く際に参照できる材料がなく困った。
ポイントだけをあげるとその他にも、
■プログラムを設計する上での余白と標準化のバランス、専用ツールの開発
■学びのスタイルに基づいた学習環境デザインを自ら実践するための手立てを整理
■自己紹介シートの活用方法が効果的だった、人数が増えてこそ機能しそう
■参加者に対してプレ/ポストでアンケートを実施し効果検証していきたい
■当日の参加者層や人数を考慮し、即興でプログラムの構成を変化させたことは◎
といったように、プログラムについて、一つ一つの活動について、ワークショップ運営について、ワークショップの評価についてなど多面的にリフレクションを行って、次回以降の実施に向けた教訓が明らかになってきています。
実践女子大学の松下先生がちょうど先日ブログで書いていたように、「全部じゃなくても2割を変える」ことを繰り返していきながら、今後もバージョンアップを重ねてこちらの「マナビをマナブワークショップ」を実施していくつもりです。
今回のワークショップの中で、前回からバージョンアップしたことを考えてみると、
はじめてゲストファシリテーターとして大村さんを迎えて実施し彼女の強みを活かすプログラムを構成したこと
ワークショップを企画する背景となっている課題意識やそれを明らかにしている研究知見を丁寧にお話したこと
学びの経験を振り返るだけではなく、学習環境デザインの視点から「自分の学びのスタイル」を考えるまでを活動にしたこと
これらは、すべて今回から取り入れたものです。こうして振り返ってみると、前回実施したものと比べると今回も「思い切った2割の変化」が功を奏していたように思います。
引き続き、より良い実践ができるように取り組んでいきたいと思います。今後は、おそらく2月には東京で、3月には北海道で(もしかしたら2回)またワークショップ実践を行えるではないかと思っています。いずれも現在調整を進めていますので、もしご興味ある方は続報をお待ち頂けたら幸いです。
全部じゃなくても2割を変えて、思い切った2割の変化で自分を変える!
"As long as you keep on learning, you are a winner."
▽参考にした文献
▽「マナビをマナブ ワークショップ」次回開催のご案内です
3月12日(日)午後に札幌市内で今回と同内容のワークショップを実施する予定です。ご参加頂ける高校生・大学生・社会人の方を募集しています。
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掲載されているワークショップの運営のお手伝いなどで関わらせて頂いた書籍です。
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