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Learning by Blogging.

経営学部で人材育成やリーダーシップ開発、キャリア教育について学ぶ大学5年生のブログ。

一石X鳥の効果的なアイスブレーキングとは!? 毎回同じネタの使い回しから脱却するための4つのポイント - Learning by 落語のまくら。

コラム

新年あけましておめでとうございます。

皆さんはこの年末年始をどのようにお過ごしでしょうか。僕は、今日から地元北海道に帰省をしているのですが、北海道、めちゃくちゃ寒いです。

僕の中の道産子としてのアイデンティティはすっかりどこかへ消えてしまったようで、「この寒さ、どうにかならんものかな」と考えていた折、「そうだ、今日はアイスブレーキングの話を書こう」となり、連想ゲームのごとくテーマが決まったところで今年のブログ始めです。

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北海道が寒すぎるから、アイスブレーキングの話

最近ではファシリテーションのノウハウが広く共有され、ワークショップや会議など様々な機会で「アイスブレーキング」が盛り込まれることが多くなりました。

まずもって、「アイスブレーキング」とは、コミュニケーションしやすい雰囲気を生み出し、話し合うきっかけを作るための簡易的なゲームやクイズ、運動などのことです。初対面の人同士が集まる際など、人と人とのわだかまりを和らげ、そこに集まった目的を達成するよう積極的に参加者に関わってもらえるよう促す技術と言えるでしょう。

一口にアイスブレーキングと言っても、様々なタイプのものがあり、日本ファシリテーション協会によると「ほぐし系」「紹介系」「悟り系」という分類があるようです。こうした分類法が生まれるほど、アイスブレーキングのアクティビティやその運用方法は多様化しています。

自身で研修を行ったり、会議やワークショップでを企画した経験のある方なら一度くらいは自分でもこうした既存のノウハウを参考にしたことがあるのではないでしょうか。

こうしてノウハウが蓄積され、共有されることで学習する環境が向上していくこと自体はとても素晴らしいことですが、反面、広く知られているアイスブレーキングの手法を同じようにそのまま導入しているだけでは、まだまだ工夫の余地があります。

そもそも、いいアイスブレーキングって何なのか?アイスブレーキングを効果的に実践するにはどんなことに気をつけたらいい?

今日はそのヒントを探してみましょう。

 

落語に学ぶ、効果的なアイスブレーキングのデザイン

落語のこと

アイスブレーキングについて考えるにあたって取り上げたいのが、古典芸能「落語」です。皆さんは落語を聞いたことがありますか?

 

落語に馴染みがある方は多くないかと思いますので、まずは、落語の構成について、簡単に説明をしていきたいと思います。

落語の噺には、基本的な構成が存在します。「枕・本編・サゲ」の三部構造です。それぞれ、導入部、本題、そして噺の締めくくりであり、笑いどころという役割があります。サゲについては「落ち」という言い方が馴染みがあるでしょうか。

落語は、この「枕・本編・サゲ」の三つをそれぞれ分裂させることなく、一連の流れで話をします。淀みない流れの中で、一席の落語が出来上がるのです。

 

中でも「枕」と呼ばれる冒頭の導入部分は、落語家が観客に対して「満員のお運び、ありがとうございます」と謝辞を述べたり、小話をして客席の空気をほぐしたりとその日の場の雰囲気を大きく左右します。落語家にとってはその時々の会場の様子を掴む上で非常に重要なパートと言えます。

通常、枕には二つの機能があります。

それは「ネタ振り」「解説」です。

 

基本的に枕では、本編のネタと関連する小話を披露します。つまり、本編で魚の話をするのに、枕でまったく関係のない花や鳥の話はしない訳です。魚に関する小話をしたり、笑いを交えながら魚に関する時世の話をしていきます。

例えば、死神に出会って病を治す呪文を教わった貧乏人が医者として大金を稼ぎ、次第に欲望にまみれていく様子を描いた「死神」というお話の枕は次のような感じです。

日本では神様を八百万の神々と申します。ところが同じ神様でもあんまり人の喜ばない神様をいます。風邪の神だとか、あるいは手水鉢の神、貧乏神、疫病神、死神なんという。ええ、こういうのは人に歓迎されませんでした。偽りのある世なりけり神無月、貧乏神は身をも離れずなんという狂歌がございますが…

このとおり、今日はこれから神様にまつわるお話をしますよ、とネタ振りをしていることが分かるかと思います。 

 

また、落語では現在は馴染みのない文化や風習、言葉が笑いのネタになっていることが少なくありません。観客がこうしたネタを知らないまま本編を聞いても笑いどころがわからないので、枕の段階でそれとなく解説をしていくことがあります。

このように落語における枕は、お客さんが本編に入りやすいように、聞き入りやすいように導いてあげる役割を持っているのです。さりげなく、それとなく、巧みに、枕から本編に移っていき、観客を引き込むことができる噺家は優れた落語家と言われます。

 

いいアイスブレーキングといい枕の4つの共通点

実は、よく設計されたワークショップでのアイスブレーキングは、落語でいうところの枕と同じ役割を果たします。いいアイスブレーキングといい落語の枕には、次の4つの共通点があります。

  1. 参加者、観客の緊張を和らげること
  2. 本編となるコンテンツ、そこから得られる意味付けと一連の流れを持っていること
  3. 本編に対するネタ振り、解説になっていること
  4. その場の雰囲気を見て、アレンジできる余白が残っていること

 

冒頭で、広く知られているアイスブレーキングの手法を同じようにそのまま導入しているだけでは、まだまだ工夫の余地がある、とお伝えしたのは、

「最近よくありがちなアイスブレーキングは1.しか満たしていないよね」という危惧と、その課題を打破するための「一石X鳥を狙う設計」がいいアイスブレーキングには必要だ、というメッセージでした。

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既存のありふれた手法をそのまま使うのではなく、アイスブレーキングを実施する目的とその後の本編との連動を意識して自前でアクティビティを設計する方が大きな効果が見込めます。

また、そうして作ったアクティビティで実際に行った際、参加者が意図していた通りに狙っていた目的を次々と達成して、まさに一石二鳥、三鳥にもなっていく様子を見ているときの爽快感は至福です。笑

今後、なにか打ち合わせやワークショップを企画し、アイスブレーキングを考える機会があれば、ぜひアイスブレーキングの活動から設計してみてください。

 

さて、新年最初の記事は研修やワークショップを行う際に行われる「アイスブレーキング」について「落語」の「枕」をもとに考えてみました。

明日も引き続き、アイスブレーキングについて考えていきたいと思います。今日整理した4つのポイントを踏まえて、僕が過去に行った「レゴ伝言」というアイスブレーキングの事例を紹介したいと思います。

 

僕は、たびたび寄席に通うほど落語が好きです。最近では、落語家さんをゲストに招いたトークイベントやワークショップも見かけるになりました。僕もそういった企画を今年は実施してみたいなと思っています。

また、こちらのブログでは今年もこうして「大人も子どもも自分に合った形で学び続けられる世界観」を目指して、「人材育成」「組織開発」「学びの場づくり」「ワークショップ」「学習環境デザイン」などをテーマに、記事を書いていこうと思いますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

ネタ振りと解説を駆使して、いいアイスブレーキングを!

"As long as you keep on learning, you are a winner."

 

▽参考にした文献

FAJ:特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 - ツール

ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり(ファシリテーション・スキルズ)

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掲載されているワークショップの運営のお手伝いなどで関わらせて頂いた書籍です。 

 

▽「自己紹介」「実践・活動」をまとめました

shumpeioe.hatenablog.jp 

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年末の習慣にしたい「リフレクション」とは!? ゆく年を振り返りくる年に備える - Learning by 2016年の振り返り。

コラム

年末のタイミングに合わせて、前々回から記事を投稿してきた、リフレクションをテーマにした連載も大晦日の今日で一区切りとなります。今日は、僕自身の2016年に経験した出来事を振り返りながら、そこから学んだことと2017年に向けての教訓について整理したいと思います。

 

早速、本編に移りたいところですが、その前に友人でライターのおーちゃん(@s_ooosawa)から、これまでの記事を読んでくれたようで、こんなツイートをしてくれていました。

たしかに、言われてみればこれまで、「いいリフレクションとは何か?リフレクションを有意義に行うためには何に気をつけたらいい?」に答えるため、いくつかのポイントを整理してきました。しかし、リフレクションとは、という概念そのものについての解説をしていませんでした。

改めて、誤解を恐れずにざくっとお伝えすると、リフレクションとは、「日々の生活の中で起こった出来事を振り返り、将来の他の時点でも転用できるよう抽象化する行為」です。辞書的な意味合いは、次のとおりです。

省察(Reflection):振り返り、反省、内省とも訳される。複数の定義があるが、デューイは省察的思考を経験の中で生じる問題解決のための探求を誘う思考であり、理論・知識を実生活に役立てるものとして位置づけた。(楠見)

先日、おーちゃんが退職エントリを投稿していましたが、在職期間中を振り返り、そこで学んだことや習得したものを見つめ直し今後の糧とするもの、と考えれば、あれも一種のリフレクションといえます。

shittaka.tokyo

 

おさらい

これまでも説明してきた、いいリフレクションを行うために気をつけておきたいポイントを改めて紹介していきます。

  1. 過去を振り返りマイセオリーを引き出す
  2. 未来のために、次どうするかを前向きな教訓として残していく
  3. 他者との関わりを前提にした振り返りに焦点を拡げる 

そして、書き残していくときの形式は、

■リフレクションは次にどうするかという原理原則/教訓を書き残す

 ・具体的な行動のイメージを例として挙げる

 ・なぜその教訓が重要なのか意味合いを書く

 ・気付きのきっかけになった出来事や経験を書く

具体例を挙げると、

■どんな業務もやみくもに着手せず、事前にやるべきことを整理する

 ・上司から仕事を頼まれた場合に、プロセスをイメージして、やるべきことの全体を捉えて、擦り合わせをした上で着手する。

 ・上司が想定していたアウトプットと方向性がずれないようにするため。また、着手した後に時間をムダにせず、効率的に業務を進めるため。

 ・〇〇について、やるべき業務の整理ができておらず、着手後に手間取って時間が掛かった。

といった具合になります。今回もこの形式を踏襲して、2016年の経験を振り返り、教訓を残していこうと思います。

 

shumpeioe.hatenablog.jp

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 2016年の振り返り

■できたこと/できなかったことを問わず、あらゆる活動を記録に残していく

 ・起床時間や1日の時間の使い方、月々の収支などお金の流れ、毎日の食生活と運動、睡眠など日々のライフログを記録として残していく。

 ・経営思想家の大家であるドラッカーの言葉の「We can't manage what we can't measure.」という言葉がある。些細なことでも目標を定めて達成していく、勝ち癖を付けていくために、まずは自分の生活に関わる現状を見える化していきたい。

 ・今年も時期によって、食生活を改善するために毎食記録を付けていた期間やランニングの実績を記録していた期間など、いくつかの活動でログを残していたものの、1年間継続して、あらゆるライフログを取り続けるということはできなかった。

 

■自分で仕掛けて、生産モードの毎日を生きていく

 ・産学連携のプログラム開発やキャリア系のワークショップの実践、ビジネスパーソン向けのラーニングイベントの企画運営などの場づくりの活動やこのブログ運営をはじめ、つくる側/生み出す側で居続ける。

 ・自分のキャリアビジョンを考えると、一つの企業や組織が提供してくれる育成システムに乗って、安心して30年を過ごせば、描きたいキャリアを積めるという訳ではないので、「学びを自ら創り出し、学びによって自らを変えよ。」を体現したい。

 ・体調が良くない時は「なんか面白いことがないかな」と消費者/受け身のマインドを過ごしてしまった。日々退屈に感じたし、頭も使えていなかった。自分の成長や学びを自作自演で実現していくことの大切さを年末のゼミレンジャー2016を通して強く実感した。

 

■コミュニケーションのスタイルをオープンに変えていく

 ・自分自身に対してや自分の活動に対して、フィードバックや意見を貰いに行く姿勢を身に付ける。建設的に成長し続けていくために、客観的な視点を聞き、改善に繋げる習慣を身につける。フィードバックは成長に欠かせない養分。

 ・1人で悩みながら時間だけが過ぎていく状況は、自身の成長にとっても担当業務の進捗にとってもタイムロスになる。フィードバックを成長機会として活用して、スピード感を持って、適切な方向に進めるようにするため。

 ・働く中で、上長や先輩のフィードバックによって業務の効率化や自分自身の行動変容が促されることを実感することが多くあった。担当する業務の改善のために関わって貰った人たちに改善点を聞いて回って、チームで振り返った機会があり、それくらいからフィードバックの受け方と活かし方に対する意識が変わった。

 

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業務や学業/研究に関する振り返りは別で既に行ってあるため、今回は「自分が愛せる自分でいられるために2016年の経験から学べることは?」という問いを意識して振り返りを進めてみました。

仕事や職場の領域だけではなく、かなり広い範囲で適用できるような教訓になってしまったのはその影響かと思います。

 

2016年。

あなたはどんな経験をしましたか?その中で何を学びましたか?

来年はどんな年にしていきたいですか?

もしも、このブログがあなたのリフレクションのお役に立てたとしたら嬉しい限りです。

 

今年もありがとうございました。それでは、よいお年を!

"As long as you keep on learing, you are a winner."

 

▽参考にした文献

「学び」の認知科学事典

「学び」の認知科学事典

 

大人の学び 熟達化と市民リテラシー

(楠見孝, 「『学び』の認知科学事典」, p250-263)

 

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▽「自己紹介」「実践・活動」をまとめました。

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前向きリフレクションで上手くいく!? 人材育成担当なら知っておきたいリフレクションのポイント - Learning by いい振り返りを考える。

コラム

あっという間に、2016年も今日と明日の2日を残すのみとなりました。連日続いた忘年会も昨日で一段落したところです。

充実した時間を過ごせる忘年会が続いていて、今年も沢山の方々にお世話になったなとご縁に恵まれたことを再確認するいい機会になりました。

忘年会でご一緒させて頂いた皆さん、ありがとうございました!

 

さて、年の瀬という今年1年を振り返る絶好の機会ということもあり、前回に引き続き、いいリフレクションって何なのか?リフレクションを有意義に行うには何に気をつけたらいい?

今日もそのヒントを探してみましょう。 

 

前回のおさらい

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前回の記事では、コルブの経験学習モデルを示し、働く大人の学びには、リフレクションを行うことで自分の経験から教訓を得て、他の場面でも応用可能な「マイセオリー」を獲得していくことが重要だと説明しました。

また、リフレクションの中でも「振り返り的省察「見通し的省察とふたつの側面があることを紹介しました。

単純に起こった出来事や自分の行動について振り返るだけではなく、過去を振り返ることに併せて、次にどうするかと想定することが大切なポイントでした。

さしずめ、前回の内容をグッと凝縮すると「未来志向リフレクションのすすめ」といったところでしょうか。

 

しかし、私たちが過ごす職場や学校など、周りの人たちと恊働する環境での経験を振り返る際には、「自分は何をしたか?」「自分は何を考えたか?」といった自分にのみ焦点を当てたリフレクションから、その対象範囲を拡げていく必要があります。

より本質的な気づきをリフレクションから得ていくためには、他者との関わりを前提とした振り返りを行うことをおすすめしたいと思います。

より深い省察となり、新たな洞察が得られることになるでしょう。

 

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コルトハーヘンのALACTモデルと8つの問い

他者との関わりを前提とするリフレクションを行うために取り上げたいものが、コルトハーヘンによるALACTモデルと8つの問いです。

コルトハーヘンは、オランダで教師教育の研究・実践を行う研究者で、学生が実際に教師として現場に出た時に、「教室と現場のギャップに対するショック」や「移行に対するショック」に直面し、深刻なストレスに感じることを問題視していました。

そこで、この移行に対するショックを軽減し、現実に近い形で教師教育を行うプログラムを開発しました。その核となるものが、「実習生として現場で経験したことへのリフレクション」です。

 

コルブの経験学習モデルでは、①実践、②経験、③省察、④概念化の四段階のプロセスが循環していると提唱されているのに対して、コルトハーヘンが提唱するALACTモデルでは、「行為」「行為の振り返り」「本質的な諸相への気づき」「行為の選択肢の拡大」「試行(行為と重なる形)」の循環モデルとして説明しています。

経験学習モデルでは省察、概念化のプロセスが曖昧に語られていたことに対して、「行為の振り返り」「本質的な諸相への気づき」「行為の選択肢の拡大」とその内容をこちらは明瞭に示しています。

 

ここでいう「本質的な諸相への気づき」「行為の選択肢の拡大」は前回登場した「見通し的省察に当たります。

「見通し的省察」が未来志向のリフレクションを行う上で重要であることと同様に、コルトハーヘンのALACTモデルの中でも「本質的な諸相への気づき」から「行為の選択肢の拡大」というプロセスはその鍵と言えます。

コルトハーヘンは「一般に教育実習生や若い教師は『行為の振り返り』から『行為の選択肢の拡大』へ飛んでしまう。安易な『反省』をして次の新しい技術に走りがちである」という事実を指摘する。(上條)

「自分が〇〇をしたところ上手くいったため、次も〇〇をする」「自分が××をしたところ失敗したため、次は◇◇をする」というように、若い実習生などによって安易な振り返りによって教訓を引き出すリフレクションが行われていることの問題を指摘しています。

 

そこで本質への気づきを促すものとして次の8つの問いがあります。

8つの問いとは、行動・思考・感情・欲求という四つの認知段階に対して、「わたしは何をしたか?」「相手は何をしたか?」というように自分軸と他者軸の2軸から振り返りの問いを立て、考えていくものです。

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この8つの問いを用いることで、これまで紹介してきた経験学習モデルや振り返り的省察、見通し的省察では触れられていない他者との関わりを踏まえた上で、自分の経験を振り返っていくことができます。

大阪樟蔭女子大学での教師教育の中で、コルトハーヘンによるALACTモデルを適応し、実践している村井の研究では、その効果を次のように報告しています。

コルトハーヘンの8つの問いを用いたリフレクションを通じて、さらに子どもの内面への考察が深まっていることが見て取れる。当時の状況の中に、自らを今一度投げ入れ、さらに自身の思考・感情・欲求・行動を追体験することで、よりアクチュアルな気づきへと繋がることが明らかになったと言える。(村井)

次にやるとしたら何ができるかという「行動のレパートリー」を増やしていくためには、リフレクションの際に他者の視点を交えて経験当時の状況を考え直すことが効果的、ということです。

 

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ここまで来て、前回からのテーマである「いいリフレクションって何なのか?リフレクションを有意義に行うには何に気をつけたらいい?」というそもそもの問いに立ち戻ってみたいと思います。

前回・今回の内容を踏まえると、次の3つがポイントになるかと思います。

  1. 過去を振り返りマイセオリーを引き出す
  2. 未来のために、次どうするかを前向きな教訓として残していく
  3. 他者との関わりを前提にした振り返りに焦点を拡げる

いいリフレクションをするにはどうしたらいい?という当初の問いに対する一つの答えは、過去の経験を自分軸と他者軸から振り返ることで、改めて自分で追体験し本質的な気づきに迫り、次やるときにはどうするかを未来を見据えた言葉で残していくこと、ではないでしょうか。

 

終わり良ければすべて良し、いいリフレクションで今年を締めくくりましょう!

"As long as you keep on learning, you are a winner."

 

▽参考にした文献

教師教育学―理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ

教師教育学―理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ

  • 作者: フレットコルトハーヘン,Fred A.J. Korthagen,武田信子,今泉友里,鈴木悠太,山辺恵理子
  • 出版社/メーカー: 学文社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 11回
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教師教育におけるリフレクション養成の具体的技法の開発研究

(上條晴夫, 東北福祉大学研究紀要, 第36巻, p179-192)

エピソード記述と教育的契機の記述による教育実習へのリフレクション

(村井尚子, 大阪樟蔭女子大学研究紀要, 第5巻, p185-194)

コルトハーヘン先生による「リフレクション学」スペシャルワークショップが終わった!:リフレクションという名の「詰問」「教え込み」「だらだらトーク」を超えて! | 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する

 

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▽「自己紹介」「実践・活動」をまとめました

shumpeioe.hatenablog.jp

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経験を振り返ることで学びに繋がる!? 効果的なリフレクションの方法 - Learning by 前向きリフレクション。

今年も残すところ、一週間となりました。既に年末休暇という方もいるのではないかと思います。少しずつ年の瀬も近づいてきたことで、最近ちらほらとSNS上でも今年一年を振り返る内容の投稿を見かけるようになりました。

次々と投稿される、友人・知人たちや同僚による「私のリフレクション」を読む度に、自分も何か書きたいなと思う反面、同時に「リフレクションって本当はどう進めたらいいんだろう?」と疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。

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かくいう僕自身もリフレクションに苦手意識を感じることがあります。

日々「退勤時にその一日の業務をリフレクションを行い、それを基にメンターと対話をする」という習慣があるものの、すぐにその日働く中で気付いたことや次に活かしていきたいことが思い浮かばず、頭を抱えてしまうことがあります。

そもそも、いいリフレクションって何なのか?リフレクションを有意義に行うためには何に気をつけたらいい?

今日はそのヒントを探してみましょう。

 

まず、リフレクションの重要性について、改めて簡単に触れておくことにします。

働く大人の学習は、学校などによる「教育によらない学習」がほとんどで、自発的なものであることが求められています。つまり、大人が学ぶためには、「日々の生活や体験の中から教訓を得ること」「自らを強く動機付けしていくこと」が必要になってくると言われています。

この「教訓を得る」「自ら動機付けをする」というふたつの観点から考えると、リフレクションの重要性を見出すことができます。

 

経験学習モデルを提唱しているコルブによると、経験学習とは、①実践、②経験、③省察、④概念化という四段階のプロセスからなると言われています。

中でも、特に省察、ここで言う「リフレクション」が重要です。リフレクションを行うことで自分の経験から、教訓を得て、それを他の場面でも応用可能な法則、「マイセオリー」の獲得を目指します。

また、リフレクションを行う習慣は、個人のキャリア観の確立を促すことも明らかになっています。リフレクションを通して、自身の専門性や得意領域の認識が進み、そのことが自分の強みを活かせる活動を行う動機付けに繋がるためです。

 

ここまでは、簡単にではありますが、働く大人の学習において、なぜリフレクションが重要になるかを整理しました。リフレクションが「埋もれた教訓を見出す」 「セルフモチベート」に繋がり、大人の学びに欠かせないことがわかったと思います。

 

長い前置きになりましたが、ここからが本題です。大人の学習に関する研究では、省察にはふたつの側面があると言われています。

  1. 振り返り的省察
  2. 見通し的省察

まずは、それぞれがどのようなものか説明をします。

振り返り的省察

振り返り的省察は、体験を解釈して深い洞察を得ることである。実践経験をしたあとで、その経験を吟味、解釈して、洞察や教訓を得ること。(楠見)

振り返り的省察の視点は、過去の経験にあります。例えば、冒頭に挙げた僕自身の業務習慣がまさにこれに当てはまります。これまでに自分が経験したことに光を当て、改めて解釈し、そこから何が学べるのかを考えることが振り返り的省察です。

見通し的省察

見通し的省察は、未来に向けて、実践の可能性について考えを深めることである。特に失敗から学ぶ場合は、第一の振り返り的洞察にもとづいて、プランを修正し、行動を改善することが重要である。(楠見)

見通し的省察の視点は、未来の予測にあります。将来起こりそうなことを想定し、その際に役に立つであろう教訓を過去の経験から引き出し、蓄積していくことが見通し的省察です。

 

いいリフレクションは、このふたつを組み合わせた、将来時点での自分の振る舞いや考え方の変容に繋がる可能性が高いもの、と言えるのではないでしょうか。

つまり、

「今日は〇〇をした。以上。」

という、単に起こった出来事や自分の行動について振り返るだけでは意味がなく、

「今日は〇〇をした。そこで▲▲なことがわかった。次に××な状況で活かせそうだ。」

といった具合に、過去を振り返ることに併せて、次にどうするかと想定をすることが重要だということです。

 

はじめに紹介したように、僕自身が感じていたリフレクションに対する苦手意識は「未来に対する視点の欠如」が原因でした。 これまで行っていたリフレクションは次のようなものです。

2016年10月13日 振り返り

  • 〇〇について、やるべき業務の整理があらかじめできていなかったため、着手した後に手間取った。
  • ▲▲について、つくるもののアウトプットイメージが曖昧だったために、作業が進まなかった。

未来視点がないどころか、出来事を記述しているだけで、何も教訓も引き出せていませんね。トホホ。

 

僕は、今後は、次のような形でリフレクションの内容を記録しておくように、振り返りの方法を変えようと思います。

 

■リフレクションは次にどうするかという原理原則/教訓を書き残す

 ・具体的な行動のイメージを例として挙げる

 ・なぜその教訓が重要なのか意味合いを書く

 ・気付きのきっかけになった出来事や経験を書く

 

過去のダメダメなリフレクションをあえて書き直すとすれば、こんな感じでしょうか。

 

■どんな業務もやみくもに着手せず、事前にやるべきことを整理する

 ・上司から仕事を頼まれた場合に、プロセスをイメージして、やるべきことの全体を捉えて、擦り合わせをした上で着手する。

 ・上司が想定していたアウトプットと方向性がずれないようにするため。また、着手した後に時間をムダにせず、効率的に業務を進めるため。

 ・〇〇について、やるべき業務の整理ができておらず、着手後に手間取って時間が掛かった。

 

過去のできごとに目を向けて、改めて解釈して教訓を引き出し、将来の自分にとって役立つように、残しておく。

いいリフレクションは未来の自分に対するプレゼントのようなものです。

一年の終わりに、今年もよく頑張った自分を労り、褒めつつ、新しい一年を迎える自分に役立つプレゼントを贈るつもりで、未来志向のリフレクションを実践してみてください。

 

新年に向けて、レッツ前向きリフレクション!

"As long as you keep on learning, you are a winner."

 

▽参考にした文献 

「学び」の認知科学事典

「学び」の認知科学事典

 

 大人の学び 熟達化と市民リテラシー

(楠見孝, 「『学び』の認知科学事典」, p250-263)

企業で働く個人の「キャリア確立」を促す学習環境に関する研究

(荒木淳子, 日本教育工学会論文誌 31号, p15-27)

アクティブラーニング温泉に「湯あたり」しちゃって生まれる「リフレクション疲れ」!? | 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する

リフレクションの展覧会!?で感じた「野生の思考」!? | 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する

「同じ体験」から「よく学べる人」と「そうでない人」の違いと、そのトレーニング方法とは? | tate-lab:舘野泰一

「振り返り」をどのようにデザインするか?:「重たい反省会」は学びにつながるか | tate-lab:舘野泰一

 

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▽「自己紹介」「実践・活動」をまとめました。

shumpeioe.hatenablog.jp

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イベントレポートを書くためのコツとは!? ワークショップの活動実践をよりリアルに表現する - Learning by イベントレポートのリライト。

コラム

このブログでも既に紹介していますが、先日はゼミレンジャー2016という6大学合同ゼミワークショップに参加してきました。その当日の様子やワークショップの活動を記録しようとイベントレポートを書いてみましたが、僕の中では「どのように書いたらいいんだろう?」という疑問が常にありました。

以前にイベントレポートを書いた際には、イベントの内容と起こった出来事時系列に沿ってまとめた、とても説明的な文章になってしまったという経験があったからです。

そもそも、イベントを開催した後のレポートやワークショップを実践した後の活動記録はどのように文章にまとめたらいい?

そんな疑問を解決するべく、「アクティブトランジション 働くためのウォーミング」に掲載されているライターの井上佐保子さんによる「ワークショップを文章にまとめるための3つのポイント」で紹介されているライティングのコツを踏まえて、自分が作成したイベントレポートをリライトしてみました。

 

井上さんが挙げている3つのポイントについて、それを踏まえて校正を行った箇所と併せて、紹介していきたいと思います。

1. 活動内容を正確に記録する

ワークショップを文章にする上で書かせないのが、活動内容の記述です。いつ、だれが、どのような活動をどのような目的で行ったのか、順序立てて記述していくことは、活動記録の基本ですが、その際は、できる限り正確に記録しておくことが大切です。(井上)

校正前

続いて、参加者に対して、事前にあらかじめ伝えられていたドレスコードである「〇〇大学っぽい服装」を使って、「リアルとリアリティ」という一日のテーマへの導入と、参加者同士のネットワーキングを行いました。それぞれの大学の代表者が自分と同じ大学っぽい格好をした人を選んで集める、という活動です。 

校正後
ふたつめの活動は、マネキンワークと称した「リアルとリアリティ」という一日のテーマに対する導入と参加者同士のネットワーキングを目的としたワークを行いました。

活動の流れは次のとおりです。まず、参加者はドレスコードとして事前に案内されていた「〇〇大学っぽい服装・格好」をしています。それぞれの大学には、自分の所属する大学っぽい服装をした代表者も混ざっており、彼/彼女たちが自分と同じ大学っぽい服装をしている参加者を集めていくという活動です。

活動内容を正確に記述する、という点を意識してリライトしたことで校正後の文章の方が明らかに活動内容が理解しやすいように変化しています。校正前の文章だけではどんな活動なのか情景をイメージすることが難しいように感じます。

2. 参加者の「言葉」に注目する

対話やグループワークなどの活動について記述する際、参加者の発する「言葉」を書き込むと、その場の様子が伝わる臨場感のある文章になります。(井上)

校正前

イベントでは、まずはじめにイントロダクションとして、立教大学の舘野先生と実践女子大学の松下先生からゼミレンジャーの趣旨と今年のテーマである「リアルとリアリティ」についてレクチャーがありました。

 校正後

イントロダクションでは、立教大学の舘野先生と実践女子大学の松下先生からゼミレンジャーの趣旨と今年のテーマである「リアルとリアリティ」についてレクチャーがありました。

参加した学生たちからは、「リアル、リアリティってどこが線引きになるんだろう」「リアル-リアリティを問われると少しドキリとする」とテーマを受けての自分なりの解釈に関するツイートが見られました。 

参加者の「言葉」に注目する、ということで校正後は参加者のツイート内容を引用して追記しました。校正後は、その瞬間に参加者がどんなことを考えていたのかが明らかになり、参加者の心理状態を理解することができます。

3. 参加者の「行動」に注目する

活動実践を描写する際には、漠然とした印象を書くのではなく、具体的な行動に注目して書き込むと、その「場」の雰囲気をリアルに伝えることができます。(井上)

校正前

身体とリアリティの関係に迫るパートは、参加者全員で「まずやってみる」のメッセージを体験するため、ラジオ体操の音楽に合わせて、テーマに合わせたそれっぽい動きを行う「リアリティ体操」に続いていきます。

校正後

突然音楽と共に始まったgirlsBandのパフォーマンスに最初は戸惑う参加者もいましたが、その後、girlsBandのメンバーから自身の経験を振り返り感じたという「まだまだできる、もっとできる」「まずやってみる」というメッセージを受けて、続く恋ダンスやリアリティ体操では、リードするgirlsBandの動きに合わせて身体を動かすなど、恥ずかしさを乗り越えていました。

参加者の「行動」に注目した結果、校正後の文章では参加者の振る舞いが変化していく様子を的確に表現することができました。参加者が当初は不安を感じていたけれど、次第に解消されていく様子を理解いただけるかと思います。

校正前

shumpeioe.hatenablog.jp

校正後

shumpeioe.hatenablog.jp

全体を通して比較を行っても、校正後の文章の方がワークショップの活動内容が整理されていることと参加した学生や教員がどのような発言をし、どのように活動していたかが理解しやすくなったと言えるのではないでしょうか。

また、当初は想定をしていませんでしたが、リライトを行ったことでイベントレポートの文章が変わり、そのことが僕自身のイベントに対するリフレクションや得られた学びに拡がりをもたらしてくれました。記事タイトルが少し変わったことも得られた教訓の拡がりにともなって起きたものです。

イベントレポートの作成とは経験を振り返りながら行う行為です。イベントレポートのリライトを行ったことから「内省を繰り返すことで、教訓を言語化の精度が高まり、そのことが経験に対する認知を変化させる」ことに気づくことができました。これは想像していなかった副産物でした。

 

さて、これまでワークショップを文章にまとめる際のライティングのコツを事例を交えながら紹介してきました。イベントレポートを書く際に役立つヒントは見つけられたでしょうか。

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今回のゼミレンジャーのようなワークショップの場では、文章で的確に表現することが難しい、「参加者同士の対話や議論を通してテーマに対する理解が深まり」「参加者の価値観や感情に揺さぶり」「活動をきっかけにした考え方や振る舞いの変化」などが起こっています。

このような現象はイベントやワークショップの場で生まれた「学習効果」と考えることができます。しかし、活動を報告するレポートが「参加者はそれぞれ気づきを得ていたみたいだ。」と書かれているようでは、その学習効果自体が本当にあったのか曖昧なものに感じてしまいます。

だからこそ、イベントレポートやワークショップの活動記録を書く際には、「たしかにその場に存在するはずの学び」をその場にいなかった人たちにも伝わるかたちで文章として表現し、報告する必要があるということです。

僕もよい活動を実践することに加えて、今日紹介したポイントを意識してよい活動記録を残し、報告していけるように心がけていきたいと思います。

 

 めざせ、イベントレポートの達人!

"As long as you keep on learning, you are a winner."

 

▽参考にした文献

ワークショップを文章にまとめるための3つのポイント

(井上佐保子,「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」, p46-47)

イベントレポートの書き方はどうすればいい?知っておきたい7つのポイント | 株式会社LIG

自分の文章に対する他者からのアドバイスをどのように受け取るべきか? | tate-lab:舘野泰一

 

▽「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」絶賛発売中

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ

 

 掲載されているワークショップの運営などで関わらせて頂いた書籍です。

その経験ってリアルなの!? 経験や学習の「リアルとリアリティ」を考える #zemiranger2016 - Learning by 6大学合同ゼミワークショップ。

コラム

このブログ記事は、2016年12月18日に投稿した

人は何かの役割を演じながら学んでいる!? 経験や学習の「リアルとリアリティ」を考える - Learning by 経験の棚卸し。 - Learning by Blogging.

を、「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」に掲載されている、ライターの井上佐保子さんによる「ワークショップを文章にまとめるための3つのポイント」を参考にし、リライトしたものです。

校正を行った箇所やその際に参考にした「ワークショップを文章にまとめるための3つのポイント」で紹介されているライティングのコツについては、後日、別記事を「Learning by イベントレポートのリライト。」として公開予定です。

ぜひ、そちらも併せて、ご覧下さい。

===

イベントレポート:「ゼミレンジャー2016~経験のリアルとリアリティを考える~」

12月17日(日)に今年で3回目の開催となる、慶應義塾大学実践女子大学東京都市大学同志社女子大学・法政大学・立教大学による6大学合同ゼミワークショップ「ゼミレンジャー2016~経験のリアルとリアリティを考える~」に参加してきました。

今回も過去2回と同様に、それぞれの大学から有志が運営チームを結成して企画運営を行いました。当日は総勢80名を超える学生が会場である実践女子大学渋谷キャンパスに集まりました。

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ゼミレンジャーというイベントでは、6大学合同ゼミを開催することによって、普段会わない他大学の学生と交流する中で、「身内ことば」、つまり、大学内やゼミ内で当たり前のように使われているけれど、外の人には伝わらない言葉を使わず、自分の大学生活での経験をテーマに対話することをねらいにしています。

今年はその3回目の開催となり、経験や学習にまつわる「リアルとリアリティ」をテーマにし、「〇〇っぽい」「役割を演じる」「背伸びをする」などをキーワードを手掛りにし、日頃の経験を振り返り言語化していく、7つの活動からなるプログラム構成となりました。

  1. イントロダクション
  2. マネキンワーク
  3. 身体とリアリティ
  4. 「ぽい」ワークショップ
  5. トークセッション
  6. リクレクティブダイアログ
  7. ラップアップ

イントロダクションでは、立教大学の舘野先生と実践女子大学の松下先生からゼミレンジャーの趣旨と今年のテーマである「リアルとリアリティ」についてレクチャーがありました。

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参加した学生たちからは、「リアル、リアリティってどこが線引きになるんだろう」「リアル-リアリティを問われると少しドキリとする」とテーマを受けての自分なりの解釈に関するツイートが見られました。

このことから経験や学習における「リアルとリアリティ」というテーマが学生たちにとっても、興味が沸き、自然と考えさせられる効果的な問いとして機能していたことが伺えました。

ふたつめの活動は、マネキンワークと称した「リアルとリアリティ」という一日のテーマに対する導入と参加者同士のネットワーキングを目的としたワークを行いました。

活動の流れは次のとおりです。まず、参加者はドレスコードとして事前に案内されていた「〇〇大学っぽい服装・格好」をしています。それぞれの大学には、自分の所属する大学っぽい服装をした代表者も混ざっており、彼/彼女たちが自分と同じ大学っぽい服装をしている参加者を集めていくという活動です。

実際にやってみると、自分の大学っぽい服装をしている参加者を当てることはなかなか難しく、中には10名の参加者を選んで正解が0だったということもありました。

マネキンワークの際に学生たちは、「立教はニットやセーターを着ているイメージがある」「東京都市はパーカーやスウェットみたいなスポーツミックスの人が多そう」「実践女子はふわふわしたパステルカラーの印象」などと、お互いの大学に対してどんなイメージを持っているかを話し合いました。

身体とリアリティのパートでは、同志社女子チームと実践女子チームが活動のファシリテーションを行いました。このパートは同志社女子大学上田ゼミgirlsBandによるパフォーマンス、参加者全員での恋ダンス、そしてラジオ体操の音楽に合わせて、与えられたテーマに沿ったそれっぽい動きをする「リアリティ体操」を行いました。

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突然音楽と共に始まったgirlsBandのパフォーマンスに最初は戸惑う参加者もいましたが、その後、girlsBandのメンバーから自身の経験を振り返り感じたという「まだまだできる、もっとできる」「まずやってみる」というメッセージを受けて、続く恋ダンスやリアリティ体操では、リードするgirlsBandの動きに合わせて身体を動かすなど、恥ずかしさを乗り越えていました。

その後、実践女子大の2年生がクリスマスをコンセプトにした装飾と、「立教は個性豊かなイメージがあり、カラフルなチョコレートのm&m」のようにそれぞれの大学のイメージからの連想で用意されたお菓子を食べながらの休憩を経て、プログラムは後半に移りました。

休憩の最中も学生たちは、「法政っぽい服装はもっとキラキラしている」「慶応は上品なおしゃれができる」などと前半の活動を受けて考えたことを互いに共有していました。

 

後半最初のワークは「ぽい」ワークショップでした。その名のとおり、参加者がそれぞれ所属している組織と個人のイメージと実際に対するギャップを認識する活動です。

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学生たちは自分の日常を表す2枚の写真をもとに、お互いの日頃の活動について話し合うことで、「私は、所属している組織のイメージと実際にギャップがあるけど、個人のイメージと実際にはギャップがない」「個人のイメージとその実際にギャップがあり、いつも初対面では誤解されやすい」などど、組織のイメージとその実際、個人のイメージとその実際、それぞれがどの程度合致しているか把握することができました。

また、日頃から無意識のうちに「立教生はおしゃれなイメージがあると言われるから、変な格好でキャンパスを歩けない」のように所属する組織へのイメージに対して、それを役割として演じていることがある、ということに気付きがありました。

この「何かの役割を演じてそれっぽく振る舞う」という行動について、当日見学に来てくださったアパレル企業で人材開発を担当されている方も、「私の会社でも同じことが起こっている。店長という役割を演じて、スタッフに厳しくフィードバックをすることがある。もし厳しいことを言われたとしても、それが100%、その店長の人間性だと思わないでほしい。」と懇親会で仰っていたのが印象的でした。

続いて、教員陣によるトークセッションが、質問に対して○×で答えながらその回答の意図を説明するという形式で行われました。

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「正直授業は面白くないと思う」「ゼミの運営上悩むことがある」「学生へのフィードバックでウソをついたことがある」などの質問があり、トークは先生としての振る舞いやゼミ運営、学ぶことや楽しむことに対する考え方など様々なテーマに拡がっていきました。

教員陣の率直な想いを聞いた学生たちは、「先生たちが楽しそうに見えた」「フィードバックでほめられても素直に喜べなくなった」などと感想を話していました。こちらは法政チームによる企画・ファシリテーションでした。

最後は、慶応チームが考えた参加者同士によるリフレクティブダイアログと同志社女子・実践女子の制作チームによるリフレクションムービーで一日を締めくくりました。

参加者同士のリフレクティブダイアログは、自分で選んだテーマに対して、他の人が連想するキーワードを書き足して貰いながらその意図をもとに対話を重ねて、マインドマップを完成させるという方法で行いました。

参加した学生たちは、「はじめは恥ずかしさがあった恋ダンスやリアリティ体操も実際にやってみたら、なんとかなった。まずやってみることが大切だと思った。」「普段、大学の中で何気なく使っている言葉が意外と外の人には通じないことがわかった。経験を振り返るいい機会になった。」などと一日を通して得られた学びや気づきを振り返りました。

僕が今回、経験や学習のリアルとリアリティというテーマを通して考えたことは、リアルな何かを目指している最中の一杯いっぱいの自分、すなわちリアルな自分を引き出す背伸びの環境を設定することが学びや成長のためには大切だということです。

これまで自分は背伸びの経験を積み重ねてこられたか、最近はリアルな自分を引き出せているか、と人の成長資源となる背伸びの経験の連鎖について内省させられる機会となりました。

これこそ、まさに松下先生が「ネガティブ・リアリティ」という言葉を使って、問題提起しようとしていたことだと感じています。

f:id:shumpeioe:20161218163001j:plain個人的には、これまで3年間このイベントの運営に携わってきた中で、今年が1番楽しめ、学ぶことが多かったと感じました。特に、普段から、自ら舞台を作り、そこで自らパフォーマンスし、まさに自作自演の学びを実践し続けているgirlsBandのメンバーからのメッセージにあった「まだまだできる」という言葉には説得力があり、勇気を貰いました。

2017年は、自作自演でどんどん学んで、成長していこうと思います。

"As long as you keep on learning, you are a winner."

 

▽ゼミレンジャー2016関連のツイートをまとめたtogetter

▽ゼミレンジャー2016の参加大学・参加ゼミの関連書籍

ダイアローグ 対話する組織

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プレイフル・ラーニング

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キャリア教育論:仕事・学び・コミュニティ

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大学教育アントレプレナーシップ―新時代のリーダーシップの涵養

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▽参考にした文献

ワークショップを文章にまとめるための3つのポイント

(井上佐保子,「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」, p46-47)

 

▽「アクティブ・トランジション 働くためのウォーミングアップ」絶賛発売中

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ

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 掲載されているワークショップの運営などで関わらせて頂いた書籍です。

人は何かの役割を演じながら学んでいる!? 経験や学習の「リアルとリアリティ」を考える - Learning by 経験の棚卸し。

コラム

イベントレポート:「ゼミレンジャー2016~経験のリアルとリアリティを考える~」

12月17日(日)に今年で3回目となる、慶応・実践女子・東京都市同志社女子・法政・立教の合同ゼミワークショップ『ゼミレンジャー2016~経験のリアルとリアリティを考える~』に参加してきました。

今回も過去2回と同様、それぞれの大学から有志が運営チームを結成して企画運営を行い、当日は総勢80名を越える学生が会場である実践女子大学渋谷キャンパスに集まりました。

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ゼミレンジャーというイベントは、6大学合同ゼミを開催することで普段会わない他大学の学生と交流する中で、「身内ことば」、つまり、大学内やゼミ内で当たり前のように使われているけれど、外の人には意味が伝わらない言葉を使わず、自分の大学生活での経験をテーマに対話することをねらいにしています。

今年はその3回目の開催となり、経験や学習にまつわる「リアルとリアリティ」をテーマに、「〇〇っぽい」「役割を演じる」「背伸びをする」といったキーワードを手掛りにし、日頃の経験を振り返り言語化していくプログラムとなりました。

 

イベントでは、まずはじめにイントロダクションとして、立教大学の舘野先生と実践女子大学の松下先生からゼミレンジャーの趣旨と今年のテーマである「リアルとリアリティ」についてレクチャーがありました。

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続いて、参加者に対して、事前にあらかじめ伝えられていたドレスコードである「〇〇大学っぽい服装」を使って、「リアルとリアリティ」という一日のテーマへの導入と、参加者同士のネットワーキングを行いました。それぞれの大学の代表者が自分と同じ大学っぽい格好をした人を選んで集める、という活動です。

ちなみに、僕は、法政大学っぽい格好をした立教大生でしたが、東京都市大っぽい格好をした人として選ばれました。もう訳わからないですね。

 

その後、同志社女子チームと実践女子チームによるファシリテーション身体とリアリティのパートとプログラムは進みました。ゼミレンジャーではすっかりとおなじみになったgirls bandのパフォーマンスから始まり、彼女たちからは「まだまだできる、もっとできる」、「まずやってみる」というメッセージがありました。自ら舞台を作りながら、そこで自らパフォーマンスをするgirls band活動を通して、まさに「自作自演」の学習を実践しているgirls bandの言葉には説得力がありました。

身体とリアリティの関係に迫るパートは、参加者全員で「まずやってみる」のメッセージを体験するため、ラジオ体操の音楽に合わせて、テーマに合わせたそれっぽい動きを行う「リアリティ体操」に続いていきます。

リアリティ体操を通して、それっぽい動きを行う中で、「〇〇っぽい」という状態や様子はリアルになろうとする上でのプロセスであり、態度であり、アプローチとしてポジティブな意味でリアリティが機能しているという学びがありました。

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クリスマスをコンセプトにした装飾とそれぞれの大学っぽいという連想で用意されたお菓子を食べながらの休憩を経て、プログラムは後半に移ります。

後半最初のワークは、その名も「ぽいワークショップ」を通して、それぞれ参加者が所属している組織と個人に対して、外から見たイメージと実際の違いを写真を使いながら明らかにしていきました。

組織のイメージと個人のイメージ、組織のイメージとその実際、個人のイメージとその実際、それぞれがどの程度合致しどの程度ギャップがあるかを把握することで、自分が日頃、無意識に何かの役割を演じている、ということに気付くことができました。

f:id:shumpeioe:20161218161258j:plain

見学に来てくださった、アパレル企業で人材開発を担当されている方も、「私の会社でも同じことが起こっている。店長という役割を演じて、スタッフにフィードバックをしたり、店舗の目標達成にコミットしている。厳しいことを言われても、それが100%、その店長の人間性のリアルだと思わないでほしい。」という趣旨のことを、懇親会で仰っていたのが印象的でした。

その後、教員陣によるトークセッションを質問に対して○×で答えながら、その回答の意図を説明するという形式で行いました。トークは先生としての振る舞いやゼミの運営上の悩み、学ぶことや楽しむことなど、様々なテーマに拡がっていきました。こちらは法政チームの企画・ファシリテーションです。

f:id:shumpeioe:20161218161332j:plain

最後は、慶応チームによる参加者同士のリフレクティブダイアログと同志社女子、実践女子の制作チームによるリフレクションムービーで一日を締めくくりました。

 

個人的には、これまで3年間このイベントの運営に関わらせて頂いてきた中で、今年が1番楽しめ、学ぶことが多かったと思いました。特に、girls bandからのメッセージにあった「まだまだできる」にはパワーを貰いました。

僕が今回、経験や学習の「リアルとリアリティ」というテーマを通して考えたことは、リアルな何かを目指している最中の一杯いっぱいの自分、すなわち、リアルな自分を引き出す環境設定をすることが学習環境デザインを考える上で大切だということです。

自分はチャレンジをしているか、背伸びの経験を積み重ねてこられただろうか、最近は背伸びをしているのか?と考えさせられる機会でした。

f:id:shumpeioe:20161218163001j:plain

2017年は、自作自演でどんどん学んで、成長していこうと思います!

"As long as you keep on learning, you are a winner."

 

▽当日のツイートをまとめたtogetterです。

▽今回のイベントの参加大学・ゼミの関連書籍です。

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